パラリンピック金メダリスト・浦田理恵さんが、見えない世界で戦うスポーツ「ゴールボール」を通して、あきらめないことの大切さをリーチ!
アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
2月19日、ロンドンパラリンピック金メダリスト・浦田理恵さんが、福岡県の福岡市立高木小学校にアスリーチ!
視覚を完全に遮断して戦うパラスポーツ・ゴールボールの体育授業を行いました。
今回は6年生約70名が参加しました。
事前に浦田さんから提供されたゴールボールの映像を見て予習して、授業に臨みました。
百聞は一見にしかず。ドキドキワクワクの中にも、知らない世界を体感することができた学びの多い授業でした。
目次
訪問アスリートご紹介
浦田理恵(うらた・りえ)さん。熊本県出身。
教師になる夢を目指していた20歳の時に目が見えなくなり、その後ゴールボールに出会う。
パラリンピックには4大会連続出場しており、ロンドンでは金メダル、東京では銅メダルを獲得。
2022年に現役を引退後、全国各地の企業・団体、学校イベントにて講演会や競技体験活動を行なっています。
学校や地域のご紹介
人口約160万人の都市、福岡市。高木小学校は南区の住宅街の中に校舎を構えます。
到着したのはちょうど登校時、雨の中校長先生が校門で児童を迎え入れていました。
今回はゴールボールの経験がある先生がいらっしゃるとのことで、コートの設営や実技の際のレフェリーなど、たくさんサポートしていただきました。
実技と講話の授業
授業の最初に、浦田さんからお話がありました。
「ゴールボール知ってる人?」
と浦田さんが質問をします。するとたくさんの児童から手があがりました。
しかし、浦田さんは目が見えません。
浦田さんが「私に分かるように教えて!」と言うと、児童たちは「はい!」という元気な声や、拍手したり床を叩いたりと、音で浦田さんに意思表示をしました。すると浦田さんは「ありがとう!」と、嬉しそうにしていました。
浦田さんとのコミュニケーションの取り方を早速学んだようです。
まずは、ゴールボールを知ってもらうために、浦田さんが動画を見せてくれました。
東京パラリンピックで銅メダルを獲得した時の試合の映像です。
目が見えなくなって、絶望を感じていた時に浦田さんが出会ったのがゴールボールというスポーツ。競技に取り組む中で、あきらめないことや仲間の大切さなど、様々な学びがあったそうです。
「見えないと怖いと思うかもしれないけど、みんなで一緒にチャレンジしよう!」
浦田さんの明るく前向きな声掛けで、実技がスタートしました。
ゴールボールとは、1チーム3人で戦うチームスポーツです。
自陣から相手方向へボールを転がし、ゴールラインを越えたら得点となります。
守るチームは相手からのボールを、体を使って止めます。
ボールの中には鈴が入っており、転がると音がします。
その音を頼りにボールの軌道を予想し、全身を使ってゴールを阻止する競技です。
早速コートに6人の児童が入ります。
ボールが転がる音だけが頼りなので、見ている児童には静かに見てもらいます。
早速投球してみますが、そもそもゴールがどの方向かわからないので、投げたボールは横に逸れてしまうことがしばしば。
そこで浦田さんがアドバイス。
「コートのラインは紐が張り巡らせてあり、凹凸があります。手や足で触ってゴールの方向を確認してね」
それを聞くと児童たちは、手探りでラインを触って、自分がコートの中のどこにいるのかを確認し、ゴールの位置をイメージして投球している様子でした。
一方守る方は、音を頼りにボールを受け止めます。
だんだん近づいてくる鈴の音を頼りに、手足を伸ばしてボールを止めようとします。
しかしなかなか反応できません。
「寝そべってみたら、自分の指先からつま先まで使ってボールを止めることができるよ」
そんなアドバイスを聞いて、一生懸命自陣のゴールを守っていました。
ボールの気配を感じて見事受け止められた時には、見ている児童たちから拍手が起きていました。
児童の攻防を見守る浦田さんは、「左にそれてしまいましたね」「いいコースに投げられました」などと、ボールの音と児童たちの反応で試合の行方を解説しています。
児童たちも、浦田さんが視覚障がい者ということを忘れている様子でした。
交代で全員が体験したところで、実技が終了しました。
参加した児童からは
「見えない怖さを感じたけど、ゴールした時は嬉しかった」
「音だけでボールを止めるのは難しかった」
などの感想がありました。
今回参加したのは4月から中学生になる6年生の児童たち。
浦田さんからは
「中学生に進学することは不安な事もあるかもしれないけど、今日みなさんはゴールボールに勇気を持ってチャレンジしてくれました。今日のことを思い出して、中学校に行ってもいろんなことにチャレンジしてください」
というお話がありました。
アスリートから児童生徒へメッセージ
苦手なことがあっても、仲間がいれば克服することができる
障がいがあっても、周りの人たちの助けがあれば、「出来る」を増やせます。
みなさんも友達を大切にして、お互いの苦手なことを補い合いながら、力を合わせて挑戦し続けてください。
成功する人は特別な人ではない
私はパラリンピックで金メダルを獲れるなんて思っていませんでした。
金メダルを取る選手は特別な存在だと思っていたからです。
でも今は、目標を持って、それに向かって努力できる人こそが成功するのだと思います。
みなさんも、まずは好きなこと、目標を見つけ、チャレンジしてみてください。
授業のまとめ
「みんなナイストライ!」
浦田さんは明るく児童に声をかけて、授業は終了しました。
スポーツという新しいステージで輝く場所を見つけた浦田さん。
不安な中でもチャレンジすることの意義を自分の体験を通してみんなに伝え続けました。
その言動は児童たちに確かにリーチしていました。
これから中学生になるみんな、色んなことにチャレンジしていってください。
高木小学校の児童のみなさん、先生方、ありがとうございました!