「走り」のプロから学ぶ!運動の大切さと正しい走り方

「走り」のプロから学ぶ!運動の大切さと正しい走り方

アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
今回はアジア大会陸上競技10000m銀メダリスト平塚潤さんが、東京都八王子市立椚田小学校にアスリーチ!体育の授業を行いました。

最初の授業は4・5年生140名に「陸上競技人生と私」というタイトルで、挫折と努力を繰り返し歩んできた道をなぞりながら、「運動すること、継続することの大切さ」をお話しいただきました。児童たちはとても興味深く耳を傾けていました。
次の授業は5年生66名に正しい走り方の実技指導。なかにはあっという間に走り方が変わり、「足が少し速くなったこと」を実感する児童が現れ、平塚さんから「100点満点!」を貰いました。
まだまだとても暑い日でしたが、児童の皆さんは熱心に最後まで取り組んでいました。

訪問アスリートご紹介

平塚潤さん。茨城県出身。高校一年生から陸上競技をはじめ、日本体育大学では箱根駅伝で活躍。1993年世界陸上10000m日本代表。1994年アジア大会銀メダル。2001年から2009年まで城西大学の監督を務めチームを箱根駅伝出場へと導く。現在は、城西大学経営学部准教授。

学校や地域のご紹介

京王線めじろ台駅から徒歩約15分、大きな校庭を持つ八王子市立椚田小学校。東京都教育委員会が指定する「体育健康教育推進校」のひとつで、運動を通じた生活習慣の大切さを児童たちに伝えています。

コミュニケーションに溢れた講義と実技の様子

講義は、スライドを使い、競技人生を振り返りながら語ってくださいました。
中学生の時は野球部に所属。将来プロ野球選手になることを夢見ていましたが、レギュラーポジションを獲得できず挫折。中学校の先生からの勧めもあり高校から陸上競技を始め日本一に。「人とは違う努力を継続してすれば人は変われる」と子供たちに話しかけました。

社会人でプロ選手となり「自分は心が弱いから」と、3年間頑張って日本代表になれなかったら「競技から引退する」と監督に公言し、自らにプレッシャーをかけたそうです。そして見事世界陸上日本代表、翌年にはアジア大会で銀メダル獲得。「自らの覚悟を言葉にすることが大事です」と平塚さんは語りかけました。
オリンピック出場への2度のチャレンジはそれぞれわずか4秒差、1秒差で逃し、「4年間必死に必死に頑張ってきたからこそ、ホテルの部屋で一晩中涙した」エピソードも交えたお話に児童たちは聞き入っていました。

講義の途中では、アジア大会で獲得した銀メダルを参加児童全員が手に触れる機会も作ってくださいました。児童たちからは歓声があがり、銀メダルを手に重さを測ってみたり、首からかけてみたり、興味ぶかく眺めたり大喜びでした。

そして講義の後半は、小学生の年代に運動すること、それを習慣化していくことの大切さをわかりやすく伝えていただきました。

講義最後の質問タイムでは多くの児童が手をあげ、「速く走るコツは?」「毎日どれくらいトレーニングしていますか?」「どんな栄養を摂っていますか?」などの質問に丁寧にお答えいただきました。「結婚していますか?」の質問が男の子から飛び出した際には、少しタジタジになる場面も。

休憩を挟んだ次の授業は校庭での「正しい走り方教室」。ウォーミングアップに始まり、体幹を使い背筋を伸ばして、太ももを高く引き上げ、つま先で着地するドリル。その後、蹴り脚をおしりにつけて走る。腕の振り方のドリルへと移行。「おへそを引っ張られるような感覚で」「拳は生卵を割れないように軽く握る感覚で」と、児童たちがイメージを掴めるようなアドバイスもあり、みるみるうちに児童たちの走り方が変わっていく様子がみてとれました。

腕の振り方は2人1組になって、後ろで手を上げて立っている人に肘をぶつけるドリルも紹介。「これはお父さん、お母さんと一緒にできるドリルだから運動会に向けて毎日3分間やりましょう」とゲキが飛びました。また、腕振りの駄目な例を披露した際には児童たちが大笑いも。

そして、10月の運動会で100m競走を控える児童たちに「50mあたりにきたら、心の中で“グイグイ”と自分で言う」「そうすれば、腕がしっかり振れるようになり、意識も高まり、走るフォームが整う」と、とっておきのアドヴァイスがあり、最後は児童たちが「グイグイ」とつぶやきながら走りました。「みんなに教えちゃったから差がつきにくいけど、努力の差はでるからね」そんな言葉もあり、終始和やかに進んでいった授業は終了しました。

アスリートから椚田小学校児童へメッセージ

他の人とは違う努力を継続してやれば変われる

高校生時代は片道20km自転車で毎日通学しました。陸上競技の練習もしながら3年間それをやり遂げました。筋力もつき、心肺機能も高まったのも事実ですが、一番は得たものは自信がついたことです。何かに興味を持ちそれをやり遂げようと思ったとき、「人とは少し違う努力を続けていけば自分は変われる。成長できる」と思って頑張ってください。

9歳から12歳の今、運動を習慣的にしよう!

9歳~12歳はあらゆることを習得するのに適した「ゴールデンエイジ」です。その時期に走ること、運動することにより持久力をつけることが大切です。
ある大学の研究レポートによると、運動後には脳の血流が上がり、思考力・集中力が急激に高まると言われています。運動をしたあとに算数のテストをすると計算スピードと正答率が上がると言う結果も出ています。さらに、朝に身体を動かすとより効果があるとも言われています。運動は脳が学習するための準備になるので、身体を動かすことはその意味でも大切です。
日常生活でエスカレーターやエレベーターを使うのではなく、階段を使いましょう。よく歩くようにするなど、活動量をあげるようにしてください。そして、よく動くようになると筋肉が疲労し硬くなりやすいので、日常的にストレッチをする習慣もつけることが大事です。

授業を終えて

講義では「運動することの大切さ、継続することの大切さ」を、実技の授業では「正しい走り方」を伝授していただきました。
児童たちの反応も良く、時間があると平塚さんのそばに行き積極的に話しかけていました。平塚さんも体操服に記されている児童の名前をみて苗字を呼び語りかけるなど、平塚さんと児童のコミュニケーションがよくとれていた授業でした。

校長先生は、「通常体力測定は年1回で、今年は6月にもう終わっていますが、11月頃に再度実施して変化をみてみたい」とのこと。児童にも先生にも、深くリーチする時間となりました。

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