「帰らないでー!」子供の希望で延長授業も!パラ陸上選手による笑顔あふれる体育授業

「帰らないでー!」子供の希望で延長授業も!パラ陸上選手による笑顔あふれる体育授業

アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
10月10日、パラ陸上競技・新田恵子さんが、大阪府の東大阪市立繩手北小学校にアスリーチ!
パラスポーツや障がい者への理解を深める講義と、身体を楽しく動かす体育実技の授業を行ました。

繩手北小学校3年生26名の児童たち、これまで車いすの方と接する機会がほとんどなかったとのこと。恥ずかしさや緊張もあってか、質疑応答などでもなかなか手が上がらなかったのですが…、なんと2コマ目の授業が終わり控室で帰りの準備をしていると、1人また1人と児童が訪れ、「もっとお話がしたいので帰らないで!」。先生の許可も出て、急きょ3時間目の授業まで行われる異例の訪問となりました!

訪問アスリートご紹介


新田恵子さん。広島県出身。
6歳の時、日常生活の不慮のアクシデントにより下半身が動かなくなり、以来、車いす生活に。
車いすテニスでパラスポーツを始め、後に陸上競技に転向。100mT53クラスの現日本記録保持者で、世界パラ陸上入賞、アジアパラ競技大会100m銀メダルなどの成績を残しました。

学校や地域のご紹介


東大阪市は、名前の通り大阪市の東隣に位置し、生駒山地を境として奈良県生駒市とも接しています。「もの作りの町」として町工場が多く、NHK朝の連続ドラマ小説「舞いあがれ」の舞台にもなりました。市のシンボルは、ラグビーの聖地・花園ラグビー場。市の看板にラグビーのイラストも使われています。

繩手北小学校の校歌には、河内の国一宮・枚岡神社や、生駒山が歌詞に織り込まれていました。

実技と講話の授業


先生のご紹介を受けて登場した新田さんを拍手で迎えた3年生の児童たち。先生に聞きましたら、ほとんどの子供たちは車いすの方と接した経験がないとのことで、そのせいかやや緊張気味に見えます。
それでも新田さんは笑顔で、明るく楽しく自己紹介。6歳の時に車いす生活になったことから、ご自身の競技歴、パラスポーツ歴などを話します。

「車イス陸上、知っている人?」との問いかけに手が上がったのは数名。そこで新田さん、実際のレース動画と練習動画を児童に見せます。そして、競技用の車イスはサイズが大きいことなどを説明。また、健常者の陸上レースとのタイム比較なども教えます。
100mでは健常者(ウサイン・ボルト)に車いすの世界記録は勝てないものの、マラソンでは約44分も速い1時間17分台が世界記録、という話を聞き、「おー!」「速い!」、子どもたちは驚きを口にしていました。

新田さんの小学生時代。当時は段差もたくさんあり、トイレも車イス対応ではない中、友達が車イスを持ち上げて運んでくれたり、校内ではとても助けてくれたそうです。

その後、車いすテニスに出会い、「車いすの人がたくさんいると知ったこと」「お互い車イスという同じ条件で真剣勝負ができること」に、新田さんは衝撃を受けたとのこと。パラスポーツとの出会いが、新田さんの人生を変えたというお話に、子どもたちは真剣に聞き入っていました。
そこから、自動車の運転や電車・飛行機移動の方法の紹介、物理的なバリアよりも心のバリアの方が悲しいというお話、小学3年生の子供たちが障害のある方々や多様性について理解できるような講義が行われた後、新田さんから児童へのメッセージが伝えられて、前半の授業が終了しました。


後半は実技!4チームに分かれ、並べたマーカーコーンを移動させながら早さを競うコーディネーショントレーニング。
動きを習得するまでは若干の難しさがあり、児童たちは頭を使いながら走り、しゃがんだり走ったり…。考えながら、息が上がるトレーニングを真剣に行いました。

みんな「きつい」と言いながら呼吸を弾ませる中、新田さんの「もう一回できますか?」という呼びかけには「できるー!!」の声。
全員で二回目チャレンジします。1度やっていることで動きに慣れた児童たち。初回とは比べ物にならない速さ、そしてチームメイトを応援する大きな声援。大熱狂のままに実技が終了しました。

最後に、新田さんが獲得したメダルをみんなで触ります。パラ競技なので、目の不自由な人のためにメダルに点字が付いていたりメダルを振ると音が鳴ったりすることを学び、2コマの授業はあっという間に終了しました。

アスリートから児童生徒へメッセージ

自分で考えてとりあえずやってみる

新しいことは不安や緊張があると思いますが、どうやったらできるかを自分なりに考えてチャレンジしてください。完璧にやる必要はありません。

大きい夢から、小さい目標をいくつも作る。そして今日出来ることを考えてみてください

まずは夢を口に出していってみましょう。身の回りの人にも話しましょう。有言実行が大切です。口に出して言わないとかないません。
大きい夢ができたら、中くらいな目標と小さい目標をいくつも作ってください。そして、では「今日は何ができるのか?」を考えてみてください。

失敗は自分だけの教科書です

夢に向かって努力をしても、うまく行かないこともたくさんあります。しかし、チャレンジしたからこそ、成功もしますし失敗もします。チャレンジしないと、何も起きません。失敗をして、それを次に生かすことが大切で、失敗は自分だけの教科書です。

授業のまとめ


終了後。授業で発言するのは恥ずかしかったから…、と控室に数人の子供が。そこから「もっと聞きたい」、児童からのリクエストで急きょ三時間目も、場所を移して延長授業!

児童たちは、日常生活の様子、新田さんの子供の頃の様子など、積極的に手を上げて質問していました。子供たちからの質問から、新田さんは1人で車イスを乗り降りする様子も実演。

「車イス乗りたい子?」には希望殺到!先生が指名した何人かで体験をしました。
そして延長した3時間目も、あっという間に終了。最後は児童4名が、新田さんが教室の段差を降りるところを上手にお手伝いしてくれました。

「まだまだ帰ってほしくない!」、3時間目の後も名残惜しそうにしていた女子児童の声が、新田さんの授業が児童の心にリーチしていたことを証明していました。

【児童たちの感想です】


みんなで「がんばれー」や、「そこそこ」と教え合い、スポーツはみんなの心をつなぐんだなと思いました。

色んなことを学べて、すごく温かい言葉をもらったから楽しかった。


前までは全然できなかった運動や体操が出来そうな気がし、アスリートの授業を受けると楽しいからです。

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