ラグビーに通じる実技と夢の実現への講義。女子7人制ラグビー・リオ五輪出場桑井亜乃さんの体育授業
アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
10月5日、7人制ラグビーでリオデジャネイロオリンピックに出場した桑井亜乃さんが、北海道の遠軽高等学校にアスリーチ!
タグラグビーの体育授業を行ました。
1コマ目は、体育の授業でラグビーを専攻している1,2年生12名に実技の授業。全員がラグビー部に所属している生徒さんたちです。ラグビーにも通じるドリルをおこなった後はタグラグビーの試合です。皆さんラグビー部所属だけあって、とてもレベルの高い試合となりました。
2コマ目は2年生156名に講義。これまで桑井さんが辿ってきた道、リオデジャネイロオリンピック出場までの努力、苦労。そしてこれからのチャレンジの話など、中身の濃い講義に、生徒の皆さんも真剣な眼差しで聞き入っていました。
目次
訪問アスリートご紹介
桑井亜乃さん。北海道出身。
中京大学までは陸上競技円盤投げの選手。アテネオリンピック陸上競技ハンマー投げ金メダリスト、現スポーツ庁長官室伏広治さんを師と仰ぐ。立正大学大学院に進学してラグビーを始め日本代表に。2014年アジア大会銀メダル。2016年リオデジャネイロオリンピック出場。2021年現役引退後はレフリーに転身し、多くの国際大会でレフリーとして活躍中。現在、世界のラグビー界で初めてとなる選手、レフリー両方でのオリンピック出場を目指しています。
学校や地域のご紹介
北海道は東京に比べるとずいぶん寒いです。午後8時前に旭川空港に降り立った際の気温は12.6℃でした。
遠軽へは旭川からバスで約2時間半。遠軽高校は遠軽駅から車で5分ほどの場所にあります。北海道は広いですね。
今回実技の授業を受けてくれた生徒の皆さんが所属するラグビー部は、今年8年ぶりに全国大会出場の切符を手に入れました。そして、吹奏楽部も全国大会への出場が決まっています。
授業の様子
この日の天候はあいにくの雨。晴れていればグラウンドで行う予定だった実技の授業は体育館でおこなわれました。そこに集まってきたのは体育の授業でラグビーを専攻する1,2年生男子10名、女子2名のラグビー部員たちです。
ラグビー部の監督も見守るなか、自分たちでアクティブストレッチをおこない、最初のドリルは「リレー形式でおこなう「ビンゴドリル」です。2チームに分かれ前方に置かれた9つのコーンの上に、自分のチームのコーンを3つ置き、早くビンゴを作ったチームが勝ちです。走りながら相手チームが置いた場所も確認しながら、自分はどこにコーンを置いたら良いか判断するドリルです。最初は少し戸惑っていたものの生徒たちの飲み込みは早いです。回を重ねるごとに白熱していきます。そして、負けたチームには掛け声をかけながらのスタージャンプの罰ゲームが待っていました。
続いておこなわれたのは、1チーム6名が向き合って直線に並び、攻撃側がボールをパスしながら人も動いてトライを狙うドリルです。攻撃側はどうパスすれば良いか、どう空いているスペースに動いたら良いかなど、周囲の状況をみながら判断して動く。守備側は攻撃側の動きについていきトライを阻止する。
やや難しいドリルですが、途中で上手くいったところ、上手くいかなかったところのレビューもしながら進めていきました。生徒の皆さんは楽しそうに大きな声を出してコミュニケーションを図っていました。上達もとても早いです。
そしてタグを獲る練習に移っていきます。二人一組で握手した状態で桑井さんの「頭、腰」などの声に合わせて自分の身体の部位を触り、「タグ」という声がかかるとタグの取り合いをします。勝った人には拍手、負けた人には「ドンマイ」の声がかかります。
続いてタグの試合に向けての導入として、ディフェンスラインの突破を身につけるドリルです。2チームに分かれ、桑井さんが「サン、イチ」「ヨン、ニ」など声をかけます。大きな数字を言われたチームが攻撃。小さな数字を言われた方が守備です。「3対1」や「4対2」の状況のなかで、攻撃側が守備をどう突破するかの判断とスキルを養います。皆さん慣れた感覚で「仕掛け」「回せ」などのコミュニケーションをとりながら、楽しそうにプレーしていました。
残りの時間は、いよいよタグの試合です。さすが皆さんラグビー部員だけあって、ポジショニングはしっかりしていますし、ボールの動かし方は上手です。一方、タックルの代わりになるタグ獲りには慣れなくて苦戦する場面も。最後は桑井さんも交えて全員で「遠軽サイン」を出しながら写真に収まりました。
2コマ目は156名の大勢の前での講義になりました。「私も北海道出身で皆さんに会えるのを楽しみに来ました」「私はすごい人ではないし、皆さんにどう伝わるかわかりませんが、少しでも参考にしていただければ」と口火をきりました。そして、夢を持つことはとても大事です。でもそれは、叶うか叶わないかはわからない。それでもかまわないと思います。夢に向かって日々できる努力をして、チャレンジすることが大切です。と語りかけました。
日本代表活動は年間280日に及んだそうですが、振り返れば自分は選手としてただ頑張るだけだった。一方で、練習や合宿は「すべて準備されたもの」で、そのセッティングなど、選手のために動いてくれていた人たちの大変さを当時は気づけなかったし、理解しようともしていなかった。現役引退後フリーランスで活動し、まだまだ夢がたくさんある今は、その大変さがよくわかるとおっしゃっていました。
今なおチャレンジし続ける桑井さん。レフリー活動だけにとどまらず、ラグビー普及活動、解説、レポーター、モデル、移動販売のクレープ屋さんまで、ご自身手書きのシートもご披露いただき語ってくれました。生徒たちは真剣な眼差しで聞き入っていました。
アスリートから児童生徒へメッセージ
夢は無限大
夢がないことは悪いことではないけど、夢を持って取り組むことは人生の楽しみになる。
夢をみつけてください。たくさんやりたいことがあっても良い。それを叶えられるかは自分次第です。やらないで後悔するくらいならまずやってみましょう。
なんでも良いから夢を持って、それを達成できるようにチャレンジ、努力する人生を送って貰いたいと思います。
チャレンジすることに意味がある
ラグビー選手を引退して、今はレフリーとしてパリオリンピック出場を目指しています。選手、レフリー両方でのオリンピック出場は、ラグビーの世界ではまだ例がありません。世界初です。
誰もやってきたことがない道にチャレンジすることは難しい。目標とする人がいないからです。自分で道をつくるしかない。そんな険しい道ですが、選択はいつも自分次第で他人が決めるものではありません。決断には大小あると思いますが毎日が決断です。失敗してもいい。チャレンジすることに意味がある。今を楽しんで、目の前にあることに必死になって頑張っている人はどこかで必ず活かされると思っています。
大切にしてほしいのは「人」
選手でオリンピックに出場して、今も新たなチャレンジをさせてもらっていますが、自分一人では成しえなかった。家族、チームメイト、コーチ、スタッフ、友達、全員に応援してもらい、全員を巻き込んで目標を達成しました。私の周りには、私のことを大切にしてくれる人がたくさんいます。だから、私もその人たちを心から大切にしています。自分の身近にいる人を大切にしてください。
授業のまとめ
実技の授業では、常におこなうドリルの目的、ラグビーに必要な要素を説きながら進めていました。最後は楽しくタグラグビーの試合になりましたが、ラグビーが上達するエッセンスが詰まった授業でした。
ラグビー部、吹奏楽部の皆さん、全国大会頑張ってください。応援しています。