パラリンピアン佐野優人さんによるゴールボールと視覚障害についての教室

パラリンピアン佐野優人さんによるゴールボールと視覚障害についての教室

アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
11月10日、ゴールボール現役日本代表・佐野優人さんが、秋田県由利本荘市の東由利中学校にアスリーチ!
ゴールボールと視覚障害について教室を行いました!

訪問アスリートご紹介

佐野優人さんは埼玉県狭山市出身のアスリートです。 もともと野球に打ち込んでいましたが、中学3年生のときに「レーベル遺伝性視神経症」という目の難病と診断され、視力を徐々に失いました。 その後、家族のすすめでゴールボールをはじめ、2016年に「東京オリンピック・パラリンピックアスリート強化支援事業」の強化指定選手となり、2017年には日本代表に初選出されました。
2020年東京パラリンピックでは5位入賞を果たしています。

学校や地域のご紹介

由利本荘市立東由利中学校は、由利本荘市東由利老方にある中学校です。
由利本荘市は秋田県内最大面積の市町村で県の10分の1を占め、日本海沿岸から鳥海山まで広がっており、内陸・鳥海山に近い地域ほど豪雪地帯となります。
学校までは秋田駅からバスで1時間、そこからさらにタクシーで30分。
秋田を出発したときと学校へ到着した時の気温の違いに驚きました。

授業の後には、教頭先生一押しの給食メニュー「カレーライス」をいただきました!

実技と講話の授業

チャイムが鳴ると、先生の紹介でアスリーチ特別授業のスタートです。
佐野さんの紹介とともに、先生が事前にリサーチしてくださっていた佐野さんが試合前にも聞いている平原綾香さんの「スタートライン」が流れます。
お気に入りの曲が流れて佐野さんもテンションが上がっていました!

生徒たちの拍手に迎えられ佐野さんが入場し、自己紹介、そして講話がはじまります。

「パラリンピックの優勝」
「後悔なく生きる」
「日本から障害のマイナスイメージを変えること」
とまず、佐野さんの夢が語られます。

ですが、この夢を持つまでにさまざまな出来事がありました。

野球で甲子園を目指していた佐野さんは、中学2年生のころに「レーベル病」という病気が発症し徐々に視力が失われ、一時期は視力0.01まで落ちてしまったそうです。(現在は0.1で真ん中がピンボケ状態とのこと)

病名がわかるまでの3ヶ月間、不安で落ち込んでいたという佐野さん。
その時支えてくれたのが、家族・友達でした。
そして野球に代わる生きがい(目標)として「ゴールボール」に出会います。

「ゴールボールってかっこいい!」

佐野さんによるゴールボールの紹介がはじまります。
ボールの大きさはバスケットボールとほぼ同じですが、重さはおよそ約2倍の1.25㎏。
中には鈴が入っており、選手はこの鈴の音やバウンドする音でボールの位置を確認します。

そしてアイシェード。

人によって視覚障害の程度がさまざまなため、選手は全員アイシェードという目隠しをつけて同じ条件でプレーをします。実際につけさせてもらった生徒さんは「何も見えないです。真っ暗です」と話していました。

コートのラインの下には紐が入っていて、選手は紐を手や足の裏で触って自分の位置を把握します。今回は簡易的に体育館にラインを引いて実際に生徒たちにも触ってもらいました。

佐野さんのお手本を見て実際に生徒たちも体験してみます。
ボールの大きさや重さで思うように投げられなかったり、ボールを受けるときの衝撃に生徒たちからは驚きの声が上がっていました。

次はパスの練習。
まずは目隠しをせずにそのまま。生徒たちは難なくこなしていきます。
それではいよいよ目隠しをしてのパス。
生徒たちは「怖い!怖い!」「どこー?」と言いながら、ボールはスルリと足元を通り抜けていきます。

「では、ここで先生たちにもやってもらいましょう!」と佐野さん。

先生たちは「こっちです」と手を叩いたり、「パスしますよ」とお互いに声を掛け合い、最後までしっかりとパスがつながりました。

今の先生たちは、みんなと何が違ったかな?と佐野さん。
「声掛け!」と生徒たちはすぐに気づきます。

「そう。みんなは目隠しをした瞬間『怖い』しか言わなくなっちゃって、全然お互いに声をかけられていなかったよね。確かに何も見えなくなると怖いよね。でもこれって日常生活の中でも同じで、街中で視覚障害の人がいたら積極的に声をかけてあげてほしいです」

そして最後は選抜の5人が佐野さんとPK対決!
1人でも勝ったら全員にサインをプレゼント。
さて、結果は……

佐野さんの全勝!
サインは学校へ1枚贈られることになりました。

アスリートから児童生徒へメッセージ

生きがいを持つ意味

生きがい(目標)を持てなかった頃は毎日が楽しくありませんでした。
その経験から、人は何かに没頭することができたら、毎日目標に向かって生きることで充実した日々が過ごせるし、生きる源がわいてくると感じました。
没頭するものはスポーツでも、音楽でも趣味でもなんでもいいです。
自分の好きなことを見つけてとことん取り組んでください。

授業のまとめ

ゴールボールという競技を通じて生きがい(目標)を持つことの大切さ、そして視覚障害のある人への関わり方と生徒たちはたくさんのことを学んでいました。
佐野さんの実体験を基にしたメッセージはしっかりと生徒たちへリーチしました。

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