好きなことを大事に!パラ・パワーリフティング成毛美和さんの特別体育授業
アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
12月6日、パラ・パワーリフティング選手の成毛美和さんが、茨城県にある茨城県立水戸高等特別支援学校にアスリーチ!
普段はなかなか触れることのない「パラ・パワーリフティング」という競技で、みんなと楽しく体育の授業が行われました。
目次
訪問アスリートご紹介
成毛美和さん。
先天性の二分脊椎症で下肢と体幹機能に障害をもっています。
32歳で車いすバスケットボールに出会い、日本代表メンバー入りを目指して12年間、競技に取り組んでいましたが、出産を機に引退。
その後、2016年にパラ・パワーリフティングに出会い、再びパラリンピック出場を目指し競技をはじめます。
2016年に出場した第17回全日本選手権大会では初出場ながら、日本新記録を樹立しました。
現在はパリパラリンピック出場を目標に、日々のトレーニングに励んでいます。
学校や地域のご紹介
茨城県立水戸高等特別支援学校は、水戸市下大野町にある公立特別支援学校で、茨城県で唯一高等部のみを設置する特別支援学校。義務教育を修了した障害の比較的軽い知的障害者の後期中等教育の充実を図るために,一人ひとりの障害の程度や能力,適性に応じた教育を行い,成長して自立できる人間を育成するために設立された高等部単独の特別支援学校です。
学校の外壁には、全国障害者技能競技大会の成績が大きく掲げられ、校内にも当時の大会で実際に作られたものが飾られていました。
実技と講話の授業
授業前、体育館に集まった生徒たちの目に飛び込んだのは、パラ・ベンチ台。普段の授業で使うことのない道具に、生徒たちの期待が膨らみました。
授業がはじまり、先生の合図と生徒たちの温かい拍手で本日の講師・成毛美和さんが登場。
成毛さんは自己紹介を終えると、生徒たちにとって馴染みのないパラ・パワーリフティングについて詳しく紹介してくれました。
一見、ジムで見るベンチプレスと違いがないように見えますが、パラ・パワーリフティングでは下半身の踏ん張りがない分、足を乗せるスペースがあるのが特徴です。
リフティングの基本動作は、腕の力だけでなく肩やお腹、背筋など全身を使う競技。
ダイエットや、さまざまなスポーツのトレーニングとしても効果があることをスクリーンで詳しく説明してくれました。
説明を終えたら実技へ。
ただ競技を体験してもらうだけでは面白くないということで、チームを作って団体戦を実施。
ルールは、各チームからひとりずつ順番にベンチプレスを2回チャレンジ。1回目は全員同じ重さに挑戦、2回目は重さを自己申告。上がった重さをポイントとしてチーム別で加算していき、最終的にポイントの多いチームの勝利です。
大会でいつも成毛さんをサポートしている瀬尾さんの指示に従い、はじめて台に座る生徒たち、バーの下に寝る位置やバーの掴み方など、教わることすべてが新鮮でした。そしてこの日使われたリフティングのウエイトは、東京パラリンピックの練習場で実際に使われていたもの。「TOKYO2020」のロゴに、生徒たちのみならず先生たちも興味津々でした。
持ち上げた瞬間と、下ろしてから再度腕を伸ばして上げた状態で止めることが、その重量をクリアできた証となります。
生徒たちは1回目の挑戦をなんなくクリア。2回目は少し重量を上げてポイントに差をつけようとする生徒もいれば、張り切って倍の重さをリクエストする生徒も!
生徒たちのチャレンジが終わったところでゲームの前半戦が終了。1回目と2回目のポイントを合計した結果、11人が後半戦に進むこととなりました。
後半戦では、50kgの重量に挑戦。
生徒たちがチャレンジする前に、エキシビションとして成毛さんがお手本を披露。
ポジションについて息を整えると、バーは上下に軽々と持ち上がりました。
週末に大会を控えていたため、これ以上の重量は上げられなかった成毛さんですが、すでに競技を体験した生徒たちからは驚きと興奮で拍手が起きました。
成毛さんに続いてと言わんばかりに気合の入る生徒たちでしたが、なかなか50kgの大台を超えることができず脱落者が続出。
最後のひとりとなった男子生徒は、バレーボール知的障害者の部門で茨城県代表に選ばれるほどの実力者。
みんなが応援する中、55kgに挑戦。なんとかバーから持ち上げることはできましたが、最後まで力が続かず無念にも失敗。しかし、授業を見ていた全員が一体となって応援して、授業は大いに盛り上がりました。
アスリートから児童生徒へメッセージ
誰よりも好きなことを大事に続けてほしい
学生のころに好きだったものが、大人になるとなかなか続かないこともあります。好きなことが仕事になることもあるので、自分が好きだと思うことを大事にしてほしいです。ただ、自分の好きなように自由にやるだけでなく、周りへの影響など配慮もふまえて、夢中になるものを大事にしてほしいです。
授業のまとめ
授業の最後には、生徒たちから成毛さんとサポートメンバーの瀬尾さんに感謝の気持ちを込めたプレゼントが贈られました。中には、生徒たちが授業で製作した手作りお菓子にトートバッグ、そして鳥小屋型のクリップスタンド。
卒業後はひとつずつ集中して形を残すプロフェッショナルの道へ進む生徒たち。成毛さんの授業で学んだ「夢中になることへの大切さ」は、これからの生徒一人ひとりの活動を支えてくれるでしょう。
授業を終えると生徒たちが成毛さんの元に集まり、サインのリクエスト。「いつも目に入るところに書いてもらっていつでも思い出せるように!」と、授業で使っているバインダーに書いてほしいという生徒も。サインをもらうと「今度の大会頑張ってください!」と激励の言葉を送って感謝の意を表す生徒たち、この日が充実した一日となったのは、間違いないですね。