車いす陸上100m日本記録保持者新田恵子さんの競技用車いすレーサー体験授業

車いす陸上100m日本記録保持者新田恵子さんの競技用車いすレーサー体験授業

アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
12月12日、車いす陸上競技・新田恵子さんが、三重県松阪市の松尾小学校にアスリーチ!体育授業を行いました。

訪問アスリートご紹介

新田恵子さん。広島県出身。6歳の時、日常生活の不慮のアクシデントにより下半身が動かなくなり、以来、車いす生活に。車いすテニスでパラスポーツを始め、後に陸上競技に転向。100mT53クラスの現日本記録保持者で、世界パラ陸上入賞、アジアパラ競技大会100m銀メダルなどの成績を残しました。

学校や地域のご紹介

松阪牛で有名な三重県松阪市。松尾小学校は松阪駅から車で十数分、運動場が道路を挟んで2つある大きな学校です。美しい山を望める校舎の近くには、木曽川の2次支川の坂内川が流れています。

実技と講話の授業

「おはようございます」子どもたちのとても元気で大きな声のご挨拶が体育館中に響き渡ります。新田さんの講義はまず車いす陸上の競技説明から。みんな車いすテニスは観たことがあるようですが、車いす陸上を観たことがある人は数名でした。新田さんから映像もみせてもらいながら丁寧に車いす陸上のことを教えてもらいました。興味深い話がたくさんありましたが、フルマラソンのオリンピックの記録が2時間1分39秒に対し、車いす陸上の記録はそれよりも43分速い、1時間17分47秒という話に、子どもたちは「速い~」と驚きの声をあげていました。
そして、6歳で車いす生活になったときに、「正直あまりピンとこなかった」という心情や、当時の小学校はスロープなどもなく友達や先生に助けてもらいながら学校生活を送った話、サッカーの体育授業にゴールキーパーで参加した話をしてくれました。そして、車いすテニスに出会い、純粋にスポーツを楽しむことを知ったこと。また、パラリンピックの創設者が語った「失ったものを数えるな、残されたものを最大限にいかせ」という言葉を紹介し、健常者でも「足りないものに目をむけるのではなく、自分はこれができる、これが得意、これを伸ばすことができる」と考えれば、パラリンピック創設者の言葉は、「万人に当てはまることだと思います」とメッセージを送ってくれました。子どもたちは真剣な眼差しで聞き入っていました。

実技は3つのグループに分かれて、3つのステーションでおこなわれました。俊敏性と動きながら頭も働かせるドリルが2つ。もうひとつは競技用車いすのレーサー体験です。これらを全員がやっていきます。

ひとつ目のステーションは、四角いエリアの真ん中に置いてある5つのマーカーを早く自分の陣地に3つ集めたら勝ちとなるドリルです。真ん中にマーカーがなくなったら相手陣地のマーカーを獲っても良いルールです。自分の陣地、相手の陣地にあるマーカーの数を頭に入れておきながら、どこへマーカーを獲りに行くのが良いか。判断力も勝つための重要なファクターになります。みんな全力でダッシュし、同じチームの仲間の声援もヒートアップします。

2つ目のステーションは、2チームに別れての「〇×ゲーム」です。自分の陣地にあるボールを、先にある9つのエリアに運びタテヨコナナメいずれかを揃えて完成させます。自分の陣地にボールがなくなったら、すでに置かれているボールを移動させて完成を目指します。自分のチームと相手チームの状況両方をにらみながら走り判断する必要があります。完成する寸前に相手にボールを置かれたり、置く場所をしくじって相手に完成させられたりと最初は戸惑いもありましたが、笑い声に包まれて楽しく体と頭を使いました。

3つ目のステーションは競技用車いすのレーサー体験です。みんなはじめて目にする競技用車いす。乗るだけでもひと苦労です。操作もそう簡単ではありません。特に曲がるときは自転車のようにハンドル操作をしますが、車いすを動かす動作とハンドル操作の切り替えのタイミングが難しいです。それでも上手な子は直線でスピードを上げ、カーブは両手でハンドル操作と器用に乗りこなしていました。

アスリートから児童生徒へメッセージ

自分で考えてまずやってみよう

新しいこと、難しいことにチャレンジするのは目指しにくいと思いますが、自分で工夫してまずやってみましょう。自分で考えるクセをつけると自分の夢ややりたいことに対して、目標の立て方が上手くなります。

大きな夢に向かって小さな目標を立ててクリアしていきましょう

夢や大きな目標を達成するためには、時間軸も含めて中間にある小さな目標を立て、今できることをやっていきましょう。それをひとつずつクリアして積み上げていけば夢や大きな目標に近づいていくと思います。

失敗は自分だけの教科書です

私もたくさん失敗してきました。夢や目標に向かって頑張っても、失敗することもあります。大切なのは失敗を次に生かしていくことです。失敗も成功も自分だけの教科書です。失敗したとしても、チャレンジしたこと自体に対して、自分をしっかり褒めてあげてください。

一生懸命やっていると必ず誰かがみてくれています

頑張ってやっていると、それに賛同してくれたり応援してくれる人が必ず現れるものです。怖れずにチャレンジしてください

授業のまとめ

この日の授業は6年生47名。パラスポーツへの理解を深める講義と、体を楽しく動かす実技。そして貴重な競技用車いすレーサー体験もできた充実した授業でした。

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