母校での授業!元車いす陸上競技日本代表新田恵子さんによる競技用車いすレーサー体験授業

母校での授業!元車いす陸上競技日本代表新田恵子さんによる競技用車いすレーサー体験授業

アスリート全国学校派遣プロジェクト『アスリーチ』。
12月22日、世界パラ陸上競技選手権3大会連続出場の元車いす陸上選手、新田恵子さんが、広島市の日浦中学校にアスリーチ!
競技用車いすレーサー体験など貴重な体育授業を行いました。

大寒波襲来のタイミングと重なり当日は雪。山の上にある学校までたどり着けるか心配されましたが、全校生徒約100名が元気に授業を受けることができました。そして、日浦中学校はなんと新田さんの母校!ここで授業ができることに新田さんも大変喜んでいました。

訪問アスリートご紹介

新田恵子さん。広島県出身。6歳の時、日常生活の不慮のアクシデントにより下半身が動かなくなり、以来、車いす生活に。車いすテニスでパラスポーツをはじめ、後に陸上競技に転向。100mT53クラスの現日本記録保持者で、世界パラ陸上入賞、アジアパラ競技大会100m銀メダルなどの成績を残しました。

学校や地域のご紹介

広島高速交通アストラムラインに乗り上安駅下車。アストラムラインは本数も多く便利です。日浦中学校そこから車で10分ほどの山の上にあります。周辺は広島市中心地のベッドタウンだそうで、団地や住宅がひろがっています。近くには動物園もありました。

実技と講話の授業

まず、母校で授業をすることになった経緯や、映像を交えて車いす陸上の紹介がありました。車いすはスタートにやや時間がかかるため、オリンピックの100mと比較すると少し遅いですが、距離が長くなるにつれ車いすのスピードがあがり、マラソンになると43分も速くゴールすることを教えてくれました。新田さんの問いかけに生徒が手を挙げて答え、その都度拍手が起こります。

そして、車いす生活になったときに「ショックというよりは実感がわかず、正直ピンとこなかった」と心情を語ってくれました。また、当時はまだ学校もバリアフリーになっておらず、両親や先生、友達に助けてもらいながら日常生活を送っていたことや、世の中には車いすの人がたくさんいて、みんな工夫して生活していることを話してくれました。

さらに、パラリンピックの創設者が語った「失ったものを数えるな、残されたものを最大限にいかせ」という言葉を紹介し、健常者でも「足りないものに目をむけるのではなく、自分はこれができる、これが得意、これを伸ばすことができる」と考えれば、この言葉は、「万人に当てはまることだと思います」とメッセージを送ってくれました。子どもたちは目を輝かせて耳を傾け、講義の終わりには大きな拍手に包まれました。

実技は3つのグループ、ステーションでおこなわれました。全員が3つのステーションで授業を受けます。ひとつ目のステーションは競技用車いすのレーサー体験です。競技用車いすをはじめて見た生徒たちから「格好いい」と声が上がります。しかし車いすに乗るのはひと苦労。操作も慣れるまでは簡単ではありません。

コツは直線で思い切り漕ぎスピードを上げ、その惰性でカーブでのハンドル操作をすることです。ひとりが体験する時間は限られましたが、すぐにコツをつかみ上手に操作する生徒が何人もいて、気持ちよさそうに走らせていました。

2つ目のステーションは俊敏性と考えながら速く動くことを磨くドリルです。四角いエリアの真ん中に置いてある5つのマーカーを早く自分の陣地に3つ集めたら勝ちです。真ん中にマーカーがなくなったら相手陣地のマーカーを獲っても良いルール。自分の陣地、相手の陣地にあるマーカーの数を頭に入れておきながら、どこへマーカーを獲りに行くのが良いか。速い判断力も勝つための重要なファクターになります。

みんな全力でダッシュし、同じチームの仲間の声援もヒートアップします。最初におこなわれた先生方によるデモンストレーションも大盛り上がり。先生方が真剣にやってくれたおかげで、爆笑に包まれました。

3つ目のステーションも俊敏性と広い視野で考えながら動くドリルです。2チームに分かれての「〇×ゲーム」をおこないます。自分の陣地にあるボールを、先にある9つのエリアに運びタテヨコナナメいずれかを完成させます。自分の陣地にボールがなくなったら、すでに置かれているボールを移動させて完成を目指します。自分のチームと相手チームの状況両方をにらみながら走り判断する必要があります。

完成する寸前に相手にボールを置かれたり、置く場所をしくじって相手に完成させられたりと最初は戸惑いもありましたが、笑い声のなか楽しく体と頭を使いました。

アスリートから児童生徒へメッセージ

自分で考えてまずやってみよう

新しいこと、難しいことにチャレンジするのは目指しにくいと思いますが、自分で工夫してまずやってみましょう。自分で考えるクセをつけると自分の夢ややりたいことに対して、目標の立て方が上手くなります。

大きな夢に向かって小さな目標を立ててクリアしていきましょう

夢や大きな目標を達成するためには、時間軸も含めて中間にある小さな目標を立て、今できることをやっていきましょう。それをひとつずつクリアして積み上げていけば夢や大きな目標に近づいていくと思います。

失敗を怖れずにチャレンジしましょう

私もたくさん失敗してきました。夢や目標に向かって頑張っても、失敗することもあります。大切なのは失敗を次に生かしていくことです。失敗も成功も自分だけの教科書です。失敗したとしても、チャレンジしたこと自体に対して、自分をしっかり褒めてあげてください。

一生懸命やっていると必ず誰かがみてくれています

一生懸命取り組むから学べることがあります。そして、一生懸命やっていると、必ず応援してくれる人、助けてくれる人が現れます。仲間を大切にして安心して前に進んでください。

授業のまとめ

授業の最後には生徒の代表から「普段では体験できない車いす体験や楽しいトレーニングを用意してくださってありがとうございました。とても楽しかったです」「失われたものを数えるより、残されたものを活かすという言葉を胸に普段の生活をしていきたいと思います」と心のこもったお礼の言葉がありました。
新田さんの母校での授業は、新田さんにも生徒のみなさんにも思い出に残るものになりました。

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