Coach Profile No.2 大角 重人(おおすみ しげと)

学生時代は、早稲田大学競走部で主務。マネージャー業を務めながら自身の練習時間を独自に確保し、箱根駅伝の選手に選ばれるという異色の経歴を持つ努力の人。卒業後、一般企業勤務を経て実業団陸上部のコーチ、独立してプロのランニングトレーナー。完走を目指す市民ランナーから、2時間30分台で走るプロのエリート女子ランナーまで、幅広くコーチングを行っている。現DeNAランニングクラブJr.コーチ。

ドリームコーチングの感想

ドリームコーチングには、リリース前の実験段階から参加させてもらってますが、正直「こんなに依頼が来るんだ!」と思いました(笑)。あれよあれよと言う間に依頼が来て、びっくりしました。

個人指導のオファー自体は、僕が普段教えている時にもあります。ただ、そういう対面ではない状況でも「お客様がいるんだ」と思ったんです。意外と来るんだって。

個人指導自体は、かけっこも、ランニングも、色々と種類があります。なので、信頼性の高いところで、申し込みできると良いと思います。

陸上って、こうやるんだ!

普段の指導のメインは、マンツーマンでないことが多いです。大会に向けてのかけっこ教室や、小学校向けの外部講師なんかですね。

少し前に、部活を頑張る中学生が来てくれたことがありました。自分もそうでしたが、部活では、専門的な指導者がいないことも多いものです。これは仕方ない面もありますが、その学生の競技人生を考えると、顧問の先生が専門知識を持っているとか、コーチが競技経験者であるとか、そういう部分でものすごく能力の伸びが決まってくる側面があります。

自分も同じように、中学までは専門的な指導を受けたことがありませんでした。なので、高校に入ってから専門的な指導を受けて初めて「陸上ってこうやるんだ!」と思ったんです(笑)。僕は他の場所にきちんとした指導者がいるという想像すらしなかったですね。なので、早い段階で、正しい習い方ができるのは、すごく大事ですよ。

現役選手に対してメリットはあるか?

競技は、どうしても受け身になりやすいものです。1つ1つのウォームアップ、試合への向き合い方、色々ありますが、どうしても毎日の流れの中で「こなし」が入ってくるからです。

それに、大学でも、実業団でも、大きなスケジュールは決まっています。夏合宿があって、駅伝が3個あって…みたいな感じです。基本的には毎年同じことの繰り返しになるんですよ。だから受け身が出てきます。

そんな中でも、教えることを前提にできれば、意識が変わります。1つ1つの動きを正確に行うことや、客観的なフォームの確認、トレーニング自体の意味の確認もする可能性が生まれます。

自分だけで完結しない仕組みをつくる

トレーニングの細部について、自分では意識しているつもりでも、現実にアウトプットして確認するシーンが無いと、本当に身についているかどうかは分かりません。ここは、自分だけで完結しないことが大切です。

僕らのような仕事をしていると、お客様の年齢層も幅広いので、伝え方、言い方なども工夫が必要です。例えば、大人なら「姿勢を良くしてください」と言えば伝わります。でも、小学生なんかだと、これだけでは不十分なことがあります。そういうときは「頭の上からお尻の下までクシで刺すように」などと、比喩を使ったりします。

競技以外のスキルについて

こういう人と人との接点で育まれる能力は、実は「競技以外」にも役に立つんです。というか、むしろそこにこそ意味があると思います。

競技、競技と近視眼的になるのではなく、他の人とも触れ合っておくと、競技生活の後のキャリアの広がりが出ますよね。平たく言えば、社交性も上がります。

もちろん、こういう考え方は個人の好き嫌いもあると思います。ただ、普段関わらない人にも関われることで、自分を応援してくれる人も生まれるし、そういう人が金銭的にも支援してくれるかもしれないんですよ。

スポーツの世界でも、SNSで発信して、リアルで触れ合って、生計を立てていく、という新しい動きがあります。これまででは考えられないものですが、事実ですし、選択肢が増えるのは喜ばしいことです。

スポーツとお金の話しについて

自分も、無銭労働をしたことはあります。スポーツの世界には、そういう部分は少なからずあると思いますね。でも、例えば僕の陸上には、約30年間の時間の積上げがあります。

なので、2時間のトレーニングを提供するのであれば、その裏側には30年間分の蓄積があるんです。競技を極める過程や、年月の積み上げの先に、お客様に対して価値を提供していると考えてますし、それくらい価値を感じてもらえるように努力しているつもりです。

未来のコーチの仕事について

技術の流れとして、例えばランニングフォームを録画して、解析し、フォームの改善点を洗い出すようなことはすぐに一般的なものになると思っています。

そのような流れの中で、対面で人が伝えるべきこと、役立てることは変わってくると思うし、そこにお金もかかるようになってくる。分かりやすく言えば、モチベーション管理をすることを始め、そういうことに自分の価値も移して行く必要があるということです。

もちろん、僕自身も職人なので、スポーツの知識を深めるとか、それを極めるとか、そういう思考になりやすいんです。でも、一歩引いて世の中を観ると、そういうこと自体に相対的な価値がなくなりつつあるので、よりコーチングの重要性が増していきます。

そういう面からも、技術だけでなく、コミュニケーションや、人との関係性の力が大事なんだと思っています。

良質なスポーツ体験

能動的に、意識的にやることが、根本的なことだと思っています。「こうなりたい、こうしたい」という目的や目標にに向けた行動が、良質なスポーツ体験と呼べるのではないでしょうか。

その意味では運動というより「コンディショニング」という言葉を使っています。コンディショニングとは、身体を「今の状態よりも良くすること」です。歩く、ストレッチする、ヨガをする、映画を観るまで、コンディショニングに入るかもしれない、それくらい広がりのある考え方です。

だから、目標を設定して、能動的に行う運動と言っても、内容は何でも良いんだと思います。今の時代においては、運動というのは、そういうものだと思います。

今の自分を少しでも良くする意識を持って、行動していく。そういう意識を根本に持っていることで、生活にハリが出たりするんです。小さいことでも大丈夫です。そういうことを理解しながらやっていくことが大事です。

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